胚の凍結保存について

採卵・受精を経て順調に胚が成長すると移植へと進んでいきますが、全員が採卵と同じ周期に移植をするわけではありません。採卵周期に移植しない場合や、複数個の良好胚があり移植しなかった胚がある場合は、いったんそれらの胚を凍結し、成長を一時停止させ、次の移植時まで保存しておきます。

胚の凍結保存方法は何種類かありますが、当院では”超急速ガラス化凍結法”というものを採用しています。この方法は融解後に生存率が高く、現在主流となっているものです。

”凍結”ときくと、冷凍庫で食品を凍らせるようなイメージをもたれるかもしれませんが、冷凍庫のようにただ温度を下げるだけでは、胚へのダメージが大きくなってしまいます。具体的には…↓↓

胚は様々な成分で構成されていますが、主要な成分は水分であり全体の約85%を占めています。そのため胚をそのまま凍らせようとすると細胞内に氷の結晶ができ、細胞を包んでいる薄い膜が破れせっかく育った胚が壊れてしまいます。壊れた胚は融解しても凍結前の状態には戻れないため、移植ができなくなります。

そこで、この超急速ガラス化凍結法では凍結時に細胞内の水分を凍結保護剤と入れ替えることによって、凍結しても結晶のできないガラスのような状態にします。このガラス化をすることによって、ほとんどの胚で細胞が壊れることなく凍結前と同じ状態に戻すことができます。ただし、この方法を用いても約1~2%の確率で凍結・融解という変化に胚が耐えられない場合もあり、融解後に胚が壊れてしまうことがあります。

実際に私たち培養士の行う作業としては…

①細胞内の水分を凍結保護剤と入れ替えた後、胚を凍結保護剤で薄く覆う

②薄いフィルムの上に乗せ室温から一気に-196℃の液体窒素の中に入れて凍結する

③凍結した胚を液体窒素で満たされたタンクの中に入れ保存する

といった流れです。定期的に液体窒素の補充は必要ですが、この中に入っている間は半永久的に保存しておくことが可能です。電気を使用しないので不意な停電時にも卵に影響はありません。

この凍結技術が確立され、胚を安全に保存することが可能になり、一度の採卵で取れた卵を無駄にすることなく有効に利用できるようになりました。