着床前診断について①

着床前診断(PGT:Preimplantation Genetic Testing)とは、体外で受精させた胚の一部の細胞を用いて染色体や遺伝子の検査を行い、正常である可能性の高い胚だけを子宮に戻して育てることです。

「着床前診断」と似た言葉として「出生前診断」というものがありますが、これは妊娠初期に胎児の異常を調べる検査です。妊娠前に行うものが「着床前診断」、妊娠後に行うものが「出生前診断」になります。

着床前診断は、検査目的によって大きく3つに分類できます。

①PGT-SR (Structural Rearrangements)

染色体の構造変化(転座など)を原因とした流産を2回以上繰り返す方を対象に、染色体構造変化の可能性が低い胚を選択して移植する方法です。構造異常の箇所以外の染色体の情報(異数性の有無)や性別についての情報は提供できません。

②PGT-M (Monogenic)

重篤な遺伝性疾患を持つ児を出産する可能性のある夫婦を対象に、疾患が発症しない胚を選択して移植する方法です。重篤な遺伝性疾患とは、「生命予後が不良で成人に達する以前に日常生活を強く損なう症状が伴う、もしくは生存が危ぶまれる疾患」のことを指します。具体的には、デュシェンヌ型筋ジストロフィーや副腎白質ジストロフィーなどです。

③PGT-A (Aneuploidies)

染色体の異数性を検査します。年齢が高くなるにつれ受精卵の染色体の数の異常(異数性)が増加します。これがART不成功や流産の増加要因と考えられます。染色体数に異常がない胚を選択して移植する方法です。

メリット

1.遺伝性疾患が遺伝する可能性のある夫婦が子供を持つことを諦めなくて良い

2.出生前診断と比べて、検査が胎児や母体に対する侵襲度が低い

3.妊娠前に行うため、中絶を回避できる

デメリット

1.病気の有無が分かっても、疾患によっては個々の症状の有無や程度については分からないことが多い

2.着床前診断の歴史が浅いため、胚を操作したことによる出生後の長期的なリスクが不明である

3.費用が高額になる

ということが挙げられます。

現在、国内で「医療行為」として行うことができる着床前診断は、PGT-MとPGT-SRのみで、日本産科婦人科学会で認可を受けた施設でのみ受けることができます。

PGT-Aに関しては、「臨床研究」という形で一定の条件を満たす方のみ行うことが可能です。こちらも、日本産科婦人科学会が認可した施設でのみ受けることができます。当院も学会から認可を受けているため、一定の条件を満たす方であればPGT-Aを行うことができます。

着床前診断は流産を繰り返す方にとって画期的な検査になりますが、注意点として検査の精度が100%ではないことが挙げられます。染色体構造が異常ではないのに異常と判定され、移植していれば子供に育ったはずの胚が移植に用いられない場合があります。また、構造異常があるにも関わらず正常と判定され、移植に用いられる可能性もあります。

以上の点を踏まえた上で、治療の1つの方法として考えてみて下さい。