培養室のお仕事~人工授精時の精子調整①~

今回から3回にわたって人工授精時の精子調整についておはなしします。

はじめに、人工授精と自然妊娠では、受精が起きるまでの過程がどう異なっているのか、精子に注目して説明をします。

○受精までの過程 自然妊娠の場合○

精液は膣内に射出され、良好な運動性をもった精子のみが上昇をはじめる

※具体的には…膣内→子宮頚部→子宮腔→卵管を通過し、卵管膨大部をめざす(全長約50μmの精子が約15cm移動します。自分の全長の3000倍です!!そんな距離を自力で上へ移動するってすごいですよね。160cmの人間に換算すると4.8kmです!)この約15cmの移動過程が重要!この過程で起こること↓↓

①死滅精子や、運動性の悪い(質の悪い)精子と運動良好精子が選別される

②精子は受精に必要な受精能という能力を獲得する

③精液中の白血球や細菌などの不要物は除去される

→受精の場である卵管膨大部に到達できた運動良好精子が卵子と出会う

→受精能を発揮することで、卵細胞の周りにある透明帯を通過し、卵細胞膜と融合する

→精子との膜融合により卵子が活性化される

→卵子と精子それぞれの核が形成される

→精子内に存在する中心体という器官の働きによって2つの核が融合する(受精の成立)

 

○受精までの過程 人工授精時の場合○

人工授精当日、患者様から培養室に精液を提出していただき、培養室で調整を行う

→調製された精液は子宮内に注入される

※膣内に射精される性交時と異なり、受精に至るまでの精子の移動距離はかなり短くなる

→精子は自らの運動性で卵管を通り卵管膨大部へと移動をはじめる

→卵管膨大部に到達し、卵子と出会う

卵子と出会ったあとは性交時の過程と同様に受精が成立する

ざっくりとですが、自然妊娠時も人工授精時も以上のような過程を経ることで受精が起こり、受精卵の成長、着床が順調にすすむと妊娠へとつながります。

受精までの過程で精子に求められることは大きく以下の3点です。

・卵管膨大部へと到達できる運動性をもつこと

・受精能を獲得でき、またその機能が高いこと

・正常なDNA、中心体をもち、正常な胚発生を起こすこと

今回はまず、はじめにということで、人工授精と自然妊娠ではどのように受精が起こるのか、受精に至るまでの精子の役割とはなにか、についておはなししました。次回は精子調整に話を戻しまして、なんのために精子調整をするのか?その目的を説明していきます。

 

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