培養室のお仕事~人工授精時の精子調整②~

今回は人工授精時に精子調整をする目的についておはなしします。なぜ射出された精液をそのまま人工授精に使用せず、精子調整を行う必要があるのでしょう。

人工授精と自然妊娠において精子の移動距離が異なることを前回おはなししました。

繰り返しになりますが、自然妊娠時は膣内に射精されてから卵管膨大部までに至る長い過程で、以下の3点が起こることがポイントです。

①死滅精子や、運動性の悪い(質の悪い)精子と運動良好な精子が選別される

②精子は受精に必要な受精能という能力を獲得する

③白血球や細菌などの不要物は除去される

一方で人工授精では精子が子宮に注入されるため、移動過程がかなりショートカットされます。

そのため、本来体内で起きているこの3点を精子調整で代行する必要があるのです。

 

そこで、精子調整を行う目的はこの3つです。

①運動良好精子を集める

②精子が受精能を獲得しやすい状態にする

③精液中の不要物を取り除く

 

まず①についてですが、受精までの過程で精子に求められることとして

・卵管膨大部へと到達できる運動性をもつこと

・受精能を獲得でき、またその機能が高いこと

・正常なDNA、中心体をもち、正常な胚発生を起こすこと

この3点を前回あげました。

 

運動良好精子は単に運動性が良好なだけではなく、高い受精能をもつとされています。さらに、DNAも正常なものが多いことが報告されています。つまり運動良好精子は卵管膨大部まで移動でき、卵子と受精しやすく、さらには正常な胚発生を起こす可能性の高い精子なのです。死滅精子、運動性の悪い精子を取り除き、運動良好精子をより多く集めることが受精、妊娠へとつながりやすくなります。

 

次に②についてです。精子調整にはいくつかの培養液を用いますが、そのうちの1つにSSS代替血清という培養液があります。このSSS代替血清中のアルブミンという物質が精子に作用することで、精子が受精能を獲得しやすくなります。本来体内で起こる受精能獲得という過程を体外で代行し、精子を受精しやすい状態にした上で、子宮に注入しています。

 

最後に③について。精液は精子と精しょうという液体で構成されていて、精しょう中には白血球や細菌などが含まれています。これらの不要物は本来子宮や卵管に到達できず除去されるものなので、あらかじめ調製によって取り除き、安全な状態にしてから精子を子宮へと注入しています。

 

前回の内容をふまえ、今回は精子調整を行う必要性、目的についておはなししましたが、どうでしょうか??次回は具体的に精子調整とはどんなものを使ってどのように行っているのか、写真を使って説明します。

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