新型コロナウィルスに感染した既往のある女性における体外受精の転帰を検討した研究。COVID-19感染症に罹患し、その後1年以内に新鮮胚移植をした女性では、受精率、凍結胚数、臨床妊娠率に有意差は認めなかった。
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)と心筋梗塞や脳梗塞を含む心血管疾患のリスクについて検討した研究。PCOSは肥満、脂質異常症、高血圧、2型糖尿病などの心血管代謝異常と関係している。PCOSと心血管代謝異常は、将来の心筋梗塞や脳梗塞などの心血管疾患のリスクを増加させる。
体外受精治療で妊娠した男性の精液とホルモン値について分析した研究。体外受精治療で妊娠した男性と一般不妊治療で妊娠した男性の間で、重度乏精子症の有病率、精子濃度、総精子数、総運動精子数は同様であった。しかし、平均総精子運動率と前進運動率は体外受精治療が必要だったグループで低く、さらに平均正常形態率が高かった。ホルモン値については平均FSH、LHレベルがともに体外受精治療が必要なグループで低く、平均テストステロンレベルは高いという結果であった。
この研究は新鮮胚移植と凍結融解胚移植における生児出産率に及ぼす子宮内膜の厚さについて検討した。新鮮胚移植では子宮内膜の厚さが10~12mm以上で生児出産率が横ばいとなり、凍結融解胚移植では7~10mm以上だった。また、子宮内膜の厚さが6mm未満の場合はいずれの場合でも生児出産率は劇的に低下した。
卵巣刺激方法による採卵当たりの累積生産率を調べた。日本のARTレジストリデータを用いた大規模レトロスペクティブスタディーを行った。卵巣反応が悪いグループでは、内服のみの低刺激方法と注射を併用したアンタゴニスト法と累積生産率は同等以上の結果だった。
不妊原因に関わらず媒精方法を顕微授精(ICSI)とするルーチンの選択は、体外受精治療初回治療において、従来の通常媒精(ふりかけ法)と比較して、良好な妊娠および周産期の転帰をもたらさないことを示した。
栄養外胚葉の生検(胚盤胞の外側の細胞を採取して検査すること)は、胚移植後12日目の妊娠初期の血清βhCGレベルを低下させる。しかし、有害な周産期合併症などの出産前後のリスク増加は認められなかった。
この研究は、蛋白質サプリメントと精液の質の関連を検討し関連性がないと報告している。しかしながら、若年男性では蛋白質サプリメントが広く使用されているため今後も同様の研究を行うことが重要であると述べている。
この研究は中隔子宮と診断された患者に対し中隔切除術の実施の有無と妊娠予後について検討した。妊娠率、出産率、妊娠継続率、流産率、早産率、胎位異常率すべての項目で有意差は認めなかったと報告している。
ホルモン補充周期で10人の健康な女性に子宮内膜を作成し、黄体ホルモン補充の5日目に子宮内膜を採取し、子宮内膜の分泌期(黄体期)に関与する各種遺伝子のDNAメチル化とRNAの変化について人工知能を用いて解析した。E2値を生理的濃度(180〜300pg/mL)、中等度(600〜800pg/mL)、高濃度(>2000pg/mL)の3つの濃度に設定し、それぞれの内膜採取時の血中プロゲステロン濃度の有意な差は認めなかった。また、子宮内膜の各種遺伝子のDNAメチル化とRNAに有意な変化は認めなかったと報告している。
この研究は卵胞の大きさと卵子の成熟率の関係を検討した。卵胞の大きさは卵子の成熟率と強い正の相関を認め、胚盤胞到達率と弱い正の相関を認めた。一方で、卵胞の大きさと正常受精率(2PN率)との関連はなく、胚盤胞のグレードや正常胚率との関連も認めなかったと報告している。
この研究は、AMHと流産の関連を検討した。自然妊娠を目指している30〜44歳の女性を対象に妊娠成立後流産にいたった患者と生児を獲得した患者のAMHを比較した。AMH>1.0 ng/mLの患者と比較しAMH <0.4 ng/mLの患者では2.3倍に流産率が増加したと報告している。
この研究は体外受精治療中の男女の心理面での違いについて検討した。男性より女性の方が精神的な負担の程度が大きく、またその期間が長くなる傾向にあった。女性は、治療期間中「抑うつ」と「不安」を感じ、特に採卵日、移植日、妊娠判定前に最大になった。一方、男性には「不安」はなく、「抑うつ」だけが治療開始前から存在し、徐々に増加して妊娠判定日前に最大になった。したがって男女の違いを加味した心理サポートプログラムが必要であると報告している。
アッシャーマン症候群(子宮内癒着症)は、およそ4/10,000の確率で認められる。今までは子宮内操作(手術)による医原性が主な原因と考えられていたが、子宮手術歴のない患者にもアッシャーマン症候群が見られることから、この研究では先天性(遺伝的)のケースが存在することが想定されると報告している。
不妊症でない女性(妊娠目指し3ヶ月以下)を対象に卵巣予備能のパラメータ(AMH、FSH)と自然妊娠するまでの期間について検討した。AMHは3つのグループ(0.7未満、0.7~8.4、8.5以上)、FSHは2つのグループ(10未満、10以上)に分け比較したところ、AMH、FSHともにすべてのグループでTTP自然妊娠するまで6カ月未満に妊娠した患者の割合は60%程度であり差は認めなかった。また、自然妊娠するまでに12カ月未満で妊娠した患者の割合もAMH、FSHすべてのグループで80%程度であり差は認めなかったと報告している。
この研究は胚盤胞から、胞胚腔液、TE細胞(胎盤になる細胞)、ICM細胞(胎児になる細胞)を採取し染色体の一致率を比較した。胞胚腔液とICM細胞、胞胚腔液とTE細胞、TE細胞とICM細胞の一致率はそれぞれ40%、40%、85.7%であったと報告している。
この研究は妊娠高血圧症候群のハイリスク妊婦に対しアスピリン内服の効果を検討した。妊娠11〜14週から妊娠36週までアスピリン150mg/日を内服した患者とプラセボを内服した患者の二つグループに分けて検討したところアスピリン群では1.6%、プラセボ群では4.3%が、妊娠37週未満での妊娠高血圧症候群を発症したと報告している。
体外受精の採卵において3つの異なる卵巣刺激開始時期を比較した。刺激方法は同一の条件下で、卵胞期前期スタート(従来法)、卵胞期後期スタート(主席卵胞>10mm、E2>75)、黄体期スタートを比較したところ要した刺激日数は卵胞期前期スタートで最も短く、次いで黄体期、卵胞後期スタートで最も長くなった。採卵数、受精率、移植胚数、臨床妊娠率、妊娠継続率等に明らかな差は認めなかったと報告している。
体外受精の採卵を行う前の周期にOC(ピル,すなわちエストロゲン+黄体ホルモン)を用いた場合の効果を検討した。OCを用いない場合と比較し生児獲得数は増加しなかったと報告している。