COVID-19感染症によるウィルス性肺炎で入院した生殖可能年齢の患者について検討した研究。妊婦は非妊婦に比べてICUへの入院頻度は高かったが、死亡率は妊婦より非妊婦の方が高く、また人工呼吸器の使用率は妊婦と非妊婦で差は認められなかった。また、人工呼吸器を使用した場合においては、妊婦は非妊婦と比較して死亡率が低かった。
COVID-19感染症による精子への影響を検討した研究。COVID-19感染症後、性質の質(運動率、精子数)の低下する可能性があることが示された。推定回復期間は3か月であるが、少数の男性に永続的な精子の損傷が生じる可能性があり、追加研究が進行中である。
概日リズム(体内時計によってコントロールされる1日の生活リズム)の障害とPCOS患者の男性ホルモン過剰が関係するか検討した研究。研究の結果、概日リズムが乱れているPCOS患者は末梢のアンドロゲン代謝の調節が阻害されており、男性ホルモンが過剰となる可能性が示唆された。PCOS管理において概日リズムの調節が重要であることが示された。
乳がん治療薬を内服した状態での卵巣刺激と標準的な卵巣刺激で乳がん女性の採卵数に変化が認められるか検討した研究。乳がん女性において、タモキシフェンやレトロゾールといった乳がん治療薬を服用中でも、標準的な卵巣刺激で採卵数は変化がないことを示唆された。
子宮内膜の厚さと体外受精における分娩の有害な周産期転機と胎盤所見について検討した研究。子宮内膜が薄い状態で体外受精により妊娠した場合、胎盤に起因する産科合併症の発生率の増加と低出生体重児の増加を認めた。また、胎盤にも血流異常病変が顕著に認められた。
流産及び反復流産既往のある女性を対象とし、ビタミンDの摂取状況とビタミンD治療により流産及び反復流産のリスクを低下させるか検討した研究。ビタミンD欠乏症及び不足は流産と関連することが示唆されたが、妊娠前のビタミンD欠乏症に対する治療が流産リスクのある女性の流産予防をするかは不明であった。
妊娠中の睡眠障害について検討した研究。妊娠中の閉塞性睡眠時無呼吸、不眠症、むずむず脚症候群は妊娠中によくみられる睡眠障害であり、これらは妊娠糖尿病や早産などのリスクを増加させる可能性があることが示された。
COVID-19感染症の原因
デルタ株またはデルタ株以前のCOVID-19感染症流行における重症化症例と有害な周産期転帰の症例は、オミクロン株によるCOVID-19感染症の症例数より多く認められた。すなわち、オミクロン株はデルタ株またはそれ以前の株よりも重症化はしにくく、妊産婦の有害事象は少ないことが示唆された。
AMHの変動が卵胞数だけでなく、遺伝的要因によって起こるか検討した研究。ヒトとラットで検討し、AMHの値は遺伝的要因にも影響することが示された。そのため、AMHの値は遺伝的背景を考慮する必要があることが分かった。
子宮内膜症や子宮腺筋症を合併する女性で妊娠率が低下するか検討した研究。子宮腺筋症またはMRIで一定の所見を認める子宮筋腫を合併する女性ではARTでの生児獲得率が有位に低くなった。
新鮮胚移植とすべての胚を凍結し移植した場合に、妊娠率に差が生じるか検討した研究。卵巣刺激に対して反応性が高く、OHSSになる可能性が高い患者では、新鮮胚移植より凍結胚移植をした場合の方が妊娠率が高いが、そうでない場合には妊娠率に差は認められなかった。
自然妊娠で出生した児と体外受精治療によって出生した児で、遺伝子にデノボ突然変異(知的障害やてんかんなどの重度の障害を起こしうる遺伝子の突然変異)の頻度に違いがあるか検討した研究。一般的に父親の年齢が高くなるとデノボ突然変異数増加するとされており、この研究においても35歳未満の父親と45歳以上の父親ではデノボ突然変異数に有意差を認めたが、自然妊娠の場合と体外受精治療の場合ではデノボ突然変異数に有意差は認めなかった。
睡眠と体外受精治療の転帰の関連について検討した研究。睡眠時間が7時間未満または入眠障害がある女性は成熟卵及び良好胚の数の減少と関連していることが示された。しかし睡眠時間が9~10時間未満の女性は7~8時間未満の女性と比較して妊娠率が低かった。なお、睡眠時間と体外受精治療の転帰との関連は30歳以上の女性および、主観的な睡眠の質が不良な女性において認められた
着床前診断でモザイク胚(正常な染色体の細胞と染色体異常のある細胞が混在している胚)と診断された1000個の胚の妊娠成績を検討した研究。着床率、出産率、継続率を比較した結果、移植胚の優先順位は正常胚>部分モザイク胚(モザイクの程度は問わない)>モザイク1本(50%未満)>モザイク2本(50%未満)>モザイク3本以上(50%未満)>モザイク1本(50%以上)>モザイク2本(50%以上)>モザイク3本以上(50%以上)となった。
異常胚やモザイク胚(正常な染色体の細胞と染色体異常のある細胞が混在している胚)を移植した場合の転帰について調査した研究。前医での着床前診断で異常胚やモザイク胚と診断され、移植を断られた胚を50名に移植した結果、8人が出産に至り、流産が11回、陰性判定が38回となった。出産児の7名は染色体正常であり、1名が着床前診断通りの染色体異常を認めた。流産して染色体検査が可能であったが9件のうち、4件は染色体正常、5件は着床前診断通りの染色体異常であった。
妊娠13週未満の妊娠初期に新型コロナウィルスに罹患した患者の妊娠継続の有無について調査した研究。自己申告による調査であり、調査対象が77名という少ない人数ではあったが、妊娠初期の感染で流産率が有意に増加することが示された。