レスキューICSIについて

今回は当院で行っている”レスキューICSI”についてのお話です。

まず、採卵時の受精方法には、体外受精(IVF)と顕微授精(ICSI)という2つの方法があります。

IVFとは、採卵した卵にたくさんの精子をふりかける方法です。精子は自分の力で卵に侵入します。体内で起こる受精過程に近い方法です。(下図:左)

ICSIとは、卵に直接精子を注入する方法です。精子の数が少ない、卵が精子を受け入れる能力に乏しいなどの理由で、IVFでの受精が難しい場合に行われます。(下図:右)

IVFでは採卵日当日に卵子に精子をふりかけ、受精確認をするのは、採卵日の翌朝です。卵に前核(以前のブログにて参照)が現れると受精となります。受精していない場合(未受精卵)は培養終了となります。

IVFを行った際にこのような未受精卵が生じるのを回避するために、当院ではレスキューICSI という授精方法をとっています。レスキューICSIとは、”通常のIVFを行っても受精しなかった卵”にICSIする方法です。

卵の受精能力は排卵後1日程度しかないため、その間に精子が入り、受精する必要があります。つまり、翌日の受精確認で未受精卵であることを確認し、そこからICSIをする、のでは間に合いません。

そのためレスキューICSIの場合は、受精確認は翌朝ではなくIVFを行ってから(精子をふりかけてから)6時間後に行います。この時点ではまだ前核が表れていないため、『受精兆候』を確認します。受精兆候がなかった場合は、”受精していないと思われる”という判断をしてICSIを行います。

受精兆候とは…

受精前の卵には、『極体』という小さな粒が1つあります。卵に精子が入ると、極体が2つに増えます。これが受精兆候です。受精兆候は精子が侵入してから2~3時間後に見られます。

 

当日中に受精兆候を確認するレスキューICSIでは未受精を回避することができますが、以下のようなデメリットもあります。

精子が入っていても極体がまだ出ていない場合や、1つのままの場合があります。そこで”受精兆候なし”と判断しICSIを行うと、結果として複数の精子が入ってしまい、多精子受精となることがあります。

②卵の質によって、精子が入っていなくてももともと極体が2つになっていることがあります。その場合は受精してなくても”受精兆候あり”と判断され、ICSIをしないため、結果として未受精となることがあります。