体外受精・胚移植(IVF-ET)

当院では、個々に合わせた "パーソナライズIVF" を考えております。

目標:採卵(卵を卵巣から取ってくる)回数最小限妊娠すること


体外受精についてのご説明

体外受精・胚移植とは

体外受精は1978年にイギリスで最初に行われました。まだその歴史は40年あまりです。日本においては1983年に最初の成功例が報告されて以来、現在では生まれてくる子供の16人に1人が体外受精での妊娠と報告されています。(2019年)

自然妊娠の経過について

自然妊娠の経過は次のように考えられています。

卵巣で作られた1個の卵は卵巣から排出されます(排卵)。その時期に精子が膣で射精されると精子は自分の力で子宮から卵管へ泳いでいきます。卵管がうまく卵子を取り込む事ができれば卵管で精子と卵子は出会い、受精をします。受精した卵は(受精卵または胚)成長しながら約5~7日かけて子宮に到達します。子宮の状態が良く、受精卵も順調に成長していけばそこで受精卵は子宮に取り込まれます(着床)。

この過程のどこかでも順調にいかないと妊娠に至りません。

体外受精の適応について

  1. 卵管性不妊:卵管に問題があり卵管に対する治療においても妊娠が困難な場合
  2. 男性不妊:精子に問題があり人工授精などでも妊娠に至らない場合
  3. 免疫性不妊:抗精子抗体ために妊娠が成立しない場合
  4. 原因不明不妊:さまざまな検査、治療によっても原因が特定できない場合
  5. その他

などが上げられます。
残念ながら現代の医学をもっても不妊原因を特定できない事もしばしばあります。そこで、上記の流れを体の外(体外)で行えば、目で見て確認しながら過程を追うことが出来るわけです。
35歳を過ぎた頃から妊娠率は急激に下降します。早めのstep upをお勧めします。

体外受精の大きな流れ

  1. 一つの卵では効率が悪い為、卵をたくさん作ります(卵巣刺激)。
  2. 排卵が起こる前に卵を卵巣から体外に取り出します(採卵)。
  3. 取り出した卵は体外で精子と出合わせます(受精)。
  4. 受精卵(胚)を体外で成長させます(培養)。
  5. 成長した胚を子宮に注入します(胚移植)。
  6. 移植後のホルモン補充(黄体期管理)。

不妊原因はそれぞれのカップルによって様々です。お二人は世界で一組しか存在しないご夫婦なわけですから、その治療方法も同じ体外受精といっても変わってくるのは当然です。 当院の理念はパーソナライズIVFという考え方です。

ご夫婦に合わせた卵巣刺激法、受精方法、培養方法、黄体期管理を選択します

卵巣刺激
基本的に人間は自然排卵で1つの卵しか排卵しません。体外受精を行う場合、効率を上げるために卵巣を刺激して1つ以上の卵を成長させる努力を行います。頻回の注射により卵巣に卵を作らせますが、これは卵巣が十分機能している場合に有効な方法です。卵巣が十分に機能していない時に卵巣を刺激しても卵はできませんので、この場合は余計な刺激は避けるべきです。卵巣の状態によって卵巣刺激の方法も変わります。具体的な刺激方法のスケジュールは、ご夫婦間での体外受精をする意思が固まったところでご説明致します。
受  精
自然妊娠において精子は自分の力で卵に入り込み受精を完了させます。ですから、基本的には採ってきた卵に精子を降りかけることで受精は成立するはずです(基本的な体外受精)。ご夫婦の中には精子の状態が悪く受精できない事もあります。また、妻の年齢が上昇すると卵の殻が固くなり、精子の状態が良くても受精しないケースもあります。基本的には精子と卵は自然に受精することが望ましいですが、そこの過程に問題がある場合は人工的に受精させる事が可能です(顕微授精=ICSI)

顕微受精の問題点は?

顕微受精という治療方法はまだ歴史が浅いというのが問題点になります。1992年が最初の報告ですからまだ30年経っていないわけです。夫の不妊原因が遺伝的なのものであるならば、それが子どもに継承される可能性があります。

培 養
卵は特殊な培養液の中で適切な温度下で管理されます。培養液も卵の質の維持、向上のために日々バージョンアップをしています。
胚移植
受精し成長した胚(受精卵)を長いやわらかいチューブで子宮に注入します(胚移植)。

受精後2、3日目移植

体外受精が始まった当初から行われている方法です。自然妊娠ではまだ卵管にいる時期ですが、それでも過去に妊娠し問題がないと考えられている為にそのまま慣例で行われています。この方法で初めて妊娠出産した女の子はすでに結婚し子供を授かっています

受精後4、5日目移植(胚盤胞移植)

人類は体外受精が始まった当初、5日目まで培養する技術を持ち合わせていませんでした。胚盤胞まで培養が出来るようになったのはここ20年あまりです。自然妊娠では受精卵は約5~7日かけて卵管から子宮に入ります。ですから胚盤胞移植は理に適っているわけです。しかしながら、2,3日目の移植と比較して歴史が浅い事が問題点となります。

日本産科婦人科学会の会告に従い移植胚数は3個まで可能ですが、多胎防止の理由から移植する受精卵の個数は原則1個と致します。多胎は産科的にリスクが高くなってしまうため、現状の日本における産科医療の問題点も含めてご理解下さい。

移植しなかった胚は?

凍結胚
移植しなかった胚や、副作用予防(副作用の項を参照)の為に移植しなかった胚はどの時点でも基本的に凍結させる事が可能です。凍結胚はそれ以降の周期で解凍し移植することができます(凍結胚移植)。

ほぼ凍結時と同様の状態に解凍されますが、解凍後に卵の成長が止まってしまう事もあり、残念ながらその場合は移植することはできません。
ちなみに精子も凍結が可能です。何らかの理由で採卵当日精子を持参することが出来ないと分かっている場合は、事前に精子凍結をしておくことができます。


凍結胚移植について

体外受精を施行前に必要な検査は?

ご夫婦共に血液による感染症の検査を行って頂きます。

体外受精は痛い?

当院では直径0.7mmの針を用いています(2015年10月から変更)。痛みについては個人差がありますが、かなり軽減され局所麻酔でほとんどの場合対応が可能です。全身麻酔のご用意もありますので担当医にお問い合わせ下さい。

体外受精の副作用、安全性

出血(外出血、腹腔内出血)、腹痛、感染、アレルギー、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)、多胎妊娠、子宮外妊娠、麻酔による副作用などが上げられます。

体外受精の歴史は30年程度ですから、長期的な予後としてまだ判明していない事もあります。十分ご夫婦間で検討をして頂き実施に踏み切って下さい。

妊娠率について

体外受精の一般的な妊娠率は女性の年齢によって違います。 移植あたり20歳代では40%、30歳代前半で30%、後半で20%、40歳では10%ぐらいと言われています。妊娠率の低下は女性の年齢と共に卵の質の低下、閉鎖卵胞の増加、原始卵胞の減少、染色体異常卵の増加などが考えられています。
当院の体外受精の成績は臨床成績の項をご覧下さい。
流産率は10~20%程度です。

特定不妊治療費助成について

体外受精に治療費には助成金が支給されます。ただし、前年度のご夫婦の所得など制限がありますので詳細は居住されている自治体の担当部署にお問い合わせ下さい。

個人情報の保護について

日本産婦人科学会は、生殖補助医療の現状把握のために施設登録を勧めています。登録施設は毎年の実施内容を報告する事になっており、当院でも必要な情報をまとめております。この報告の際に、個人情報は確実に保護され個人を特定できる事はありません。

費用について

どのような手技を選択するかによって変わってきますが、およそ20万~
 (行う治療内容によって違ってきます。)