自己血小板由来成分濃縮物 (PFC-FD)を用いた治療

この説明文は、あなたに治療の内容を正しく理解していただき、あなたの自由な意思に基づいて治療を受けるかどうかを判断していただくためのものです。
この説明文書をよくお読みいただき、担当医師からの説明をお聞きいただいた後、十分に考えてから治療を受けるかどうかを決めてください。ご不明な点があれば、どんなことでも気軽にご質問ください。


治療の目的及び内容について

この治療法は、あなた自身の血液から抽出した高濃度の血小板に含まれる成長因子を子宮内に注入する方法です。血小板由来の成長因子は、細胞の成長をうながす物質や免疫にかかわる物質を含むため、この療法により子宮内膜が十分に厚くなることが期待できます。
この期待される効果により、受精卵が着床しやすくなると考えられています。自己血小板由来成分濃縮物(PFC-FD)を用いた治療は、不妊治療以外にも顔の皮膚などに投与する形成外科治療や関節に投与する整形外科治療におこなわれています。

スケジュールと治療

この治療中は、定められたスケジュールで来院して、以下の検査や問診をうけます。

  • この不妊治療の内容について、本書を用いて説明を行い、文書による同意を得ます。
  • 治療前に、問診や臨床検査を実施し、子宮内膜の厚さを経腟エコーで測定します。
  • 臨床検査の結果によってはできないことがあります。
  • 月経周期(月経が始まった日が1日目)の10日目、12日目に子宮内膜厚を経腟エコーで測定し、 PFC-FDを子宮内に注入します。なお、12日目の2回目注入は、希望で省略することができます。

治療に用いる自己血小板由来成分濃縮物(PFC-FD)について

この治療に用いるPFC-FDは、治療を受ける本人(あなた)から採取した血液を元に作製し、主に血小板に由来する成長因子から構成されます。採血は、注射器を用いた一般的な方法で当院にておこない ます。
PFC-FDは再生医療センター(特定細胞加工物製造許可施設、厚生労働省認可)を開設するセルソース社に採血した血液を搬送し作製します。採取した血液を専用のチューブと遠心分離機を用いて遠心分離(遠心力を利用して、血液中の成分を分離する方法)し、フィルターを通して不要なものを取り除いた後、凍結乾燥を経て、成長因子のみを濃縮・抽出します。

治療を受けていただくことによるメリット・デメリットについて

期待されるメリット

PFC-FDには成長因子が多く含まれていることから、子宮内に注入することで、子宮内膜が厚くなる効果が期待できます。子宮内膜が厚くなることによって、融解胚移植を実施できる可能性があります。さらに、胚移植後受精卵が着床しやすくなることが期待できます。

起こるかもしれないデメリット

PFC-FDは、治療を受ける本人(あなた)の血液を使います。他人の組織を移植する場合に用いる免疫抑制剤を使うことがないため、この免疫抑制剤による副作用の心配はありません。
採血のために静脈内に注射針を刺す行為が必要となりますので、採血したところに一時的な痛みや腫れ、皮下出血を伴うことがあります。また、採血は約50mLですので、通常の献血量である200mL、あるいは400mLに比べて少量であり、比較的安全性の高い処置だと考えられますが、ごく稀に気分不良、吐き気、めまいを生じる場合があります。これらの症状が起きた場合には最善の処置を行います。
全ての方に効果があるとは限らず、胚移植まで至らない場合もあります。また、PFC-FDを子宮内に注入するとき、ごく稀に器具などによる膣や子宮内の擦過傷を伴う場合があります。不妊治療の成否には様々な要因が関わっているため、この治療だけで不妊治療の成否を判断することは出来ません。
作製したPFC-FDが規格を満たさない場合や、作製途中で発生した問題により作製が完了しなかっ た場合など、採血を行ったにもかかわらず、治療ができない場合があります。

治療を受けることの拒否について

あなたは、この治療を受けることを強制されることはありません。また、説明を受けた上で、この治療を受けるべきでないと判断した場合は、治療を受けることを拒否することができます。

同意の撤回について

あなたは、この治療を受けることについて同意した場合でも、治療を受ける前であればいつでも同意を撤回することができます。

治療を受けることの拒否、同意の撤回による不利益について

あなたは、この治療を受けることを拒否したり、この治療を受けることを同意した後に同意を撤回した場合であっても、今後の診療・治療等において不利益な扱いを受けることはありません。

個人情報の保護について

この治療を行うにあたり、あなたから取得した個人情報は、本院の取扱いに伴う規定に従い適切に管理、保護されます。

血液などの保管及び廃棄の方法について

この治療の為に採取させていただいた血液の保管は行いません。また、製造したPFC-FDの保存期間を過ぎた場合は破棄いたします。同意を撤回されたことにより使用しなくなった血液やPFC-FDは、医療廃棄物として適切に廃棄します。

PFC-FDを作製するにあたって

PFC-FDは感染症検査(HIV、HBV、HCV、梅毒、HTLV-1)で陰性の方のみ作製が可能です。血液検査の結果によって作製ができない場合は、血液検査費用のみご負担をお願いいたします(13000円程)。
体調の良くない場合や血液の状態によっては、ごく稀に作製が出来ない場合もあります。その際には再度採血をお願いする場合があります。また、医療機関からの血液を輸送する際に破損があった場合は、再度採血をしていただく必要があります。

医療機関について

医療機関名: 矢内原ウィメンズクリニック
医療機関の管理者:矢内原敦
担当医師: 矢内原敦、黄木詩麗、近藤哲郎

お問い合わせの体制について

当院では、この治療法に関するお問い合わせの窓口を設置しております。
お問合せ窓口電話番号:0467-50-0112

費用について

この治療は、社会保険、国民健康保険などの医療制度上の保険で受けることはできません。そのため、この治療に必要となる費用につきましては、全額ご負担いただく必要がございます。
治療に必要となる費用は15万円(税別)となります。血液を媒介する感染症検査費用は基本的に含まれますが、必要がある場合は13000円ほど(税別)追加費用が発生します。
なお、血液の採取後やPFC-FDの作製後に同意を撤回された場合など、同意を撤回される時点までに費用が発生している場合は、発生した費用についてはご負担いただきますのでご了承ください。

他の治療法の有無、この治療法との比較について

子宮内膜の肥厚化を目的とした他の治療法として、ホルモン補充療法や薬剤投与があります。一般的な不妊治療は、エストロゲンを投与する(ホルモン補充療法)ことにより、子宮内膜を厚くさせます。それでも子宮内膜が厚くならない方が、PFC-FDを用いた治療の対象となります。また、PFC-FD治療と同様に、子宮内に注入し子宮内膜の肥厚化が期待される治療法として、G-CSF(Granulocyte Colony-Stimulating Factor)投与が挙げられます。G-CSFは、主に胚盤胞や子宮内膜などで自然に分泌されるサイトカインの一種で、細胞の増殖や分化を促進します。これらPFC-FDやG-CSF投与はいずれも確立された治療法ではなく、それぞれの効果の優劣については不明です。

健康被害に対する補償について

この治療により健康被害が発生した場合は、迅速かつ適切に必要な措置をとります。健康被害の治療にかかる費用についてはご負担いただきますのでご了承ください。

その他の特記事項

あなたの健康状態を把握するため、この治療を受けた日から必要な期間、疾病等の発生の有無やその他の健康状態について経過観察を行うことがございます。
この治療にあたって、ヒトゲノム・遺伝子解析は行いません。また、採取した血液や作製したPFC-FDを今後、別の治療や研究に用いることはありません。

採血の予約について

採血は月~土の午前中の診療時間内に行っています。完全予約制です。
必ず、予約希望日の5日前までに当院へ電話していただき、「PFC採血」の予約をお取りください。
予約受付時間:9:00~17:00
予約電話番号:0467-50-0112

自己血小板由来成分濃縮物(PFC-FD)を用いた治療 子宮内注入について

血液の中には自己修復機能を促進する成長因子が多数含まれています。これらを集めて子宮内に投 与することで子宮内膜の性質に変化をもたらし、着床を助けることが考えれられています。

適応

胚移植周期時、子宮内膜がなかなか厚くならない方

方法

採血

事前に採血(約50ml)をして血液から血小板由来成長因子を抽出し凍結乾燥保存をします。

  • 採血は月~土の午前中の診療時間内に行っています。完全予約制です。
    必ず、予約希望日の5日前までに当院へ電話していただき、「PFC採血」の予約をお取りください。
    予約受付時間:9:00~17:00 予約電話番号:0467-50-0112

PFC-FD

約3週間でフリーズドライ(パウダー状)になったPFC-FDを受け取ることができます。

(胚移植周期)

注入

胚移植周期に注入のスケジュールを決めていきます。注入日に事前にお渡ししてあるPFC-FDを持参いただき、注入していきます。

胚移植

費用

こちらをクリックしてご確認ください。

自己血小板由来成分濃縮物(PFC-FD)を用いた治療
卵巣内注入について
―卵巣機能の再生への取り組み-

血液の中には様々な物質が含まれており、その中でも自己修復機能をもつ成長因子は再生医療の視点からも注目を集めています。その因子を血液から抽出し、卵巣に直接注入することで、卵巣機能不全、卵巣機能の再生への試みがなされています。

適応

卵巣機能不全、低卵巣反応、早発閉経の方

方法

採血

事前に採血(約50ml)をして血液から血小板由来成長因子を抽出し凍結乾燥保存をします。この1回の採血で6回分(左右の卵巣に注入するなら3回分)の治療が可能です。

  • 採血は月~土の午前中の診療時間内に行っています。完全予約制です。
    必ず、予約希望日の5日前までに当院へ電話していただき、「PFC採血」の予約をお取りください。
    予約受付時間:9:00~17:00 予約電話番号:0467-50-0112

PFC-FD

約3週間でフリーズドライ(パウダー状)になったPFC-FDを受け取ることができます。

注入

PFC-FD は2周期に分けて注入します。推奨される注入方法は月経開始5~ 10日目に局所麻酔下で経膣超音波を行いながら、卵巣に直接1ml程度に溶解したPFC-FDを注入します。
1周期目に1回、2周期目に2回行います。3周期目に卵巣の状態を検査します。

採卵

注意事項

  • 超音波上、卵巣が萎縮している場合、注入が不可能なことがあります。採血を行う前に超音波で卵巣の状態を確認する必要があります。
  • 自己から採取したものなので、アレルギー反応などは通常起こりませんが、卵巣への注入による腹腔内出血などは起こりえます。

費用

  • PFC-FD作成:165,000円
  • PFC-FDの卵巣内への注入:1回55,000円(3回行う場合は165,000円)

ご不明な点はスタッフにお問い合わせ下さい。