睡眠と体外受精治療の転帰の関連について検討した研究。睡眠時間が7時間未満または入眠障害がある女性は成熟卵及び良好胚の数の減少と関連していることが示された。しかし睡眠時間が9~10時間未満の女性は7~8時間未満の女性と比較して妊娠率が低かった。なお、睡眠時間と体外受精治療の転帰との関連は30歳以上の女性および、主観的な睡眠の質が不良な女性において認められた
着床前診断でモザイク胚(正常な染色体の細胞と染色体異常のある細胞が混在している胚)と診断された1000個の胚の妊娠成績を検討した研究。着床率、出産率、継続率を比較した結果、移植胚の優先順位は正常胚>部分モザイク胚(モザイクの程度は問わない)>モザイク1本(50%未満)>モザイク2本(50%未満)>モザイク3本以上(50%未満)>モザイク1本(50%以上)>モザイク2本(50%以上)>モザイク3本以上(50%以上)となった。
異常胚やモザイク胚(正常な染色体の細胞と染色体異常のある細胞が混在している胚)を移植した場合の転帰について調査した研究。前医での着床前診断で異常胚やモザイク胚と診断され、移植を断られた胚を50名に移植した結果、8人が出産に至り、流産が11回、陰性判定が38回となった。出産児の7名は染色体正常であり、1名が着床前診断通りの染色体異常を認めた。流産して染色体検査が可能であったが9件のうち、4件は染色体正常、5件は着床前診断通りの染色体異常であった。
妊娠13週未満の妊娠初期に新型コロナウィルスに罹患した患者の妊娠継続の有無について調査した研究。自己申告による調査であり、調査対象が77名という少ない人数ではあったが、妊娠初期の感染で流産率が有意に増加することが示された。
新型コロナウィルスに感染した既往のある女性における体外受精の転帰を検討した研究。COVID-19感染症に罹患し、その後1年以内に新鮮胚移植をした女性では、受精率、凍結胚数、臨床妊娠率に有意差は認めなかった。
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)と心筋梗塞や脳梗塞を含む心血管疾患のリスクについて検討した研究。PCOSは肥満、脂質異常症、高血圧、2型糖尿病などの心血管代謝異常と関係している。PCOSと心血管代謝異常は、将来の心筋梗塞や脳梗塞などの心血管疾患のリスクを増加させる。
体外受精治療で妊娠した男性の精液とホルモン値について分析した研究。体外受精治療で妊娠した男性と一般不妊治療で妊娠した男性の間で、重度乏精子症の有病率、精子濃度、総精子数、総運動精子数は同様であった。しかし、平均総精子運動率と前進運動率は体外受精治療が必要だったグループで低く、さらに平均正常形態率が高かった。ホルモン値については平均FSH、LHレベルがともに体外受精治療が必要なグループで低く、平均テストステロンレベルは高いという結果であった。
この研究は新鮮胚移植と凍結融解胚移植における生児出産率に及ぼす子宮内膜の厚さについて検討した。新鮮胚移植では子宮内膜の厚さが10~12mm以上で生児出産率が横ばいとなり、凍結融解胚移植では7~10mm以上だった。また、子宮内膜の厚さが6mm未満の場合はいずれの場合でも生児出産率は劇的に低下した。
卵巣刺激方法による採卵当たりの累積生産率を調べた。日本のARTレジストリデータを用いた大規模レトロスペクティブスタディーを行った。卵巣反応が悪いグループでは、内服のみの低刺激方法と注射を併用したアンタゴニスト法と累積生産率は同等以上の結果だった。
不妊原因に関わらず媒精方法を顕微授精(ICSI)とするルーチンの選択は、体外受精治療初回治療において、従来の通常媒精(ふりかけ法)と比較して、良好な妊娠および周産期の転帰をもたらさないことを示した。
栄養外胚葉の生検(胚盤胞の外側の細胞を採取して検査すること)は、胚移植後12日目の妊娠初期の血清βhCGレベルを低下させる。しかし、有害な周産期合併症などの出産前後のリスク増加は認められなかった。
この研究は、蛋白質サプリメントと精液の質の関連を検討し関連性がないと報告している。しかしながら、若年男性では蛋白質サプリメントが広く使用されているため今後も同様の研究を行うことが重要であると述べている。
この研究は中隔子宮と診断された患者に対し中隔切除術の実施の有無と妊娠予後について検討した。妊娠率、出産率、妊娠継続率、流産率、早産率、胎位異常率すべての項目で有意差は認めなかったと報告している。
ホルモン補充周期で10人の健康な女性に子宮内膜を作成し、黄体ホルモン補充の5日目に子宮内膜を採取し、子宮内膜の分泌期(黄体期)に関与する各種遺伝子のDNAメチル化とRNAの変化について人工知能を用いて解析した。E2値を生理的濃度(180〜300pg/mL)、中等度(600〜800pg/mL)、高濃度(>2000pg/mL)の3つの濃度に設定し、それぞれの内膜採取時の血中プロゲステロン濃度の有意な差は認めなかった。また、子宮内膜の各種遺伝子のDNAメチル化とRNAに有意な変化は認めなかったと報告している。
この研究は卵胞の大きさと卵子の成熟率の関係を検討した。卵胞の大きさは卵子の成熟率と強い正の相関を認め、胚盤胞到達率と弱い正の相関を認めた。一方で、卵胞の大きさと正常受精率(2PN率)との関連はなく、胚盤胞のグレードや正常胚率との関連も認めなかったと報告している。