神奈川県の不妊治療専門クリニック 矢内原ウィメンズクリニック

受精を補助する「卵子活性化」について

培養部 培養部―卵・胚について

当院で行っている、「卵子活性化」についてお話します。

卵子活性とは受精時に卵細胞内で生じる現象のことで、以前にも取り上げた「減数分裂」の起点となる現象を指します。(当院blog link受精時の卵について)「受精」という現象において精子と卵子が出会うのは絶対的な条件でありますが、ただ出会えば受精するというわけではありません。卵子に精子が入ると精子頭部内に存在していた卵子を活性化する因子(精子因子)が卵細胞内に取り込まれます。するとカルシウムイオンが上昇し、卵子の活性化が始まります。これをきっかけに減数分裂が始まり、受精が始まります。

 

なぜ活性化をする必要があるのか

採卵時に成熟卵を得られ、ふりかけ法ないし顕微授精で正常受精卵を得られている方であれば卵子内で正常に活性が生じていることがわかりますので、本手技を特別に行う必要性はありません。基本的には、成熟卵にふりかけ法を行っても未受精で、さらに顕微授精を施行しても未受精が続いてしまう方に対し行います。

 

未受精卵とは

第一極体が確認された成熟卵に顕微授精を行うと通常であれば1.0時間後ほどで第二極体が確認できます。その後、5.0時間後には前核と呼ばれる受精卵の遺伝子カプセルのようなものが確認することができます。受精とは基本的に、2つの極体と2つの前核をもってして正常受精と判断します。

一方で成熟卵(第一極体放出)に顕微授精を行っても前核が確認できず正常な受精・発生が開始されない卵子が存在しています。これが未受精卵と呼ばれる卵です。

顕微授精であれば、厳選された良好精子を細胞質内に直接注入しているため精子が侵入していないという事はありません。よって複数個顕微授精を行い、そのほとんどが未受精卵であれば卵子活性化が生じていないことが疑われます。

顕微授精後に受精を認めなかった卵子の43%は精子側に受精障害があると報告されています。卵子活性の起点となるのは前述の精子因子であるため、精子因子の異常による受精障害であれば人工的卵子活性化により正常受精に至れる可能性があります。

 

 

一方で

卵子活性化は受精に重要ですが、顕微鏡やタイムラプスなどで実際にその様子を観察することはできません。また、未受精卵になる理由は様々存在し、その理由の断定は不可能です。よって、数回の採卵および受精の結果を持ってして人為的卵子活性化の適応かどうか判断する必要があります。

 

活性化処理自体に不自然的な違和感や拒否感を覚えられる方もおられるかもしれません。ですが、「卵子活性化」は受精卵であればそのすべてで生じています。人工的に手は加えられているものの、生じている現象は変わらず、通常の受精で生じる現象を代替的に起こしているというものが本手技の意義となっております。

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